SS倉庫(R18)

舞−HiME(静留×なつき)SS置場

運命の日 6

静留からタッチを受けたなつきはリングの中へと身を躍らせると、その場に蹲ったままでいる碧の頭を、つま先でポンと蹴った。
相手に屈辱だけを与えるように。
肉体的なダメージではなく、精神的なダメージを与えるために。
右膝を拳でポンポンと叩いてその感触を確かめるようにして、ゆっくりと碧が立ち上がる。
既に右足には、体重をかけることが出来ないようだった。
静留の情け容赦ない重点的な攻撃は、その部分にかなりの負荷をかけたようだ。
執拗にグラウンドで右膝を責めていて、それを見守っていたFWPのファンからも悲鳴があがったほどだった。

なつきは、それをコーナーから見つめていた。
プロレスは、相手との信頼関係があってこそ試合が成り立つものである。
この選手ならここまでは耐えられる、この技まではきちんと受けられる、としっかりと考えた上で、技をお互いに繰り出していく。
そうでなければ、ただの潰しあいとなってしまって、プロレスの試合としては成立しない。
静留は、碧が受けきれると思っているからこそ、ここまで厳しい攻めを見せているわけだし、それは、相手を認めているということに他ならない。

更にダメージを与えようとして放った右足が、がっちりと碧にキャッチされた。
片足でバランスを取っていたところを押し倒されると、そのままアキレス腱固めへと移行される。
技が決まった瞬間、足首から電流のような痛みが走り、慌ててあいているほうの足で碧の顔面を踏みつけ脱出した。

「・・・っ!くそっ!」

すぐに動かして、足の状態をチェックする。
大丈夫。
これくらいなら、何の支障もない。
右膝の痛みのせいで素早く立ち上がることの出来ない碧を尻目に、なつきは再び怒涛の攻撃を開始した。
油断してはならない。
立ち上がれないからといって舐めてかかると、マットに這いつくばるのは自分のほうだ。
再び、蹴る。
速さではなく、威力を重視して。
五発目が脇腹に決まったところで、再度足を掴まれた。
今度は押し倒されないように、片足でしっかりと踏ん張る。
しかし、それが裏目に出た。
碧はニヤッと笑うと、なつきの右足をしっかりと脇でロックして、そのまま内側へと自分の身体を巻き込み、高速でなつきの足ごと回転させた。

(・・・ドラゴンスクリューか!しまった!)

右膝に、衝撃が走る。
しっかりと踏ん張っていたせいで、碧が回転を始めた時についていくのが遅れ、その分膝が違う方向へと捻られると、瞬く間に痛みが激しく襲ってきた。

「うわああああぁ!」

膝を押さえて、転げまわる。
もともと蹴りを多用することもあり、膝の靭帯はあまり良い状態ではなかった。
そして、その技を碧が繰り出してくることも、全く予期していなかった。
しかし、キックを使う選手にとってある意味足を封じるのには定番の技で、キャッチされた時にその可能性を考えなかった自分が甘い。
唇を噛み締めて、うめき声を消す。
その隙に足を無理矢理伸ばされると、足四の字を仕掛けられた。

「・・っ!」
「ギブするかい?」
「・・・うるさい!」

先ほど痛められた膝を責め立てるように、碧は絞り上げてくる。
ドラゴンスクリューからの足四の字は、蹴りを使う選手にとって、鬼門の技だ。
逃げようにも、足がしっかりとロックされているため、先ほどのように暴れて脱出することも出来ない。
肘をマットについて、上半身の力だけでロープへと向かう。
しかし、逃げた場所が悪かった。
そこはガルデローベ側のロープで、立っていた遥が足だけリングの中へ差し入れると、なつきの頭をおもいっきり踏みつけてから、静留に向かって中指を立てて挑発した。

「降参したらどう?!」
「黙れっ!」
「黙るのは、あんたのほうよ!」

何度も頭を、踏みつけられる。
それを耐えるしかなくて、なつきが腕で頭部を庇っていると、不意にその攻撃がやんだ。
目を開ける。
いつの間にか、遥の傍に来ていた雪之がその足を引っ張って、場外戦を仕掛けようとしていた。

「・・・菊川!」

雪之は今、首を怪我している。
それなのに、あの珠洲城遥をリングから引き落とすと、客席のほうへ投げようと試みていた。
しかし、やはり投げられたのは逆に、雪之のほうで。
慌ててそちらのほうへ走っていく舞衣の姿が見えた。

「・・・あっ!」

不意に痛みが和らいで、足元のほうにいた碧へと視線を移す。
いつの間にかリングの中へと入っていた静留が、なつきから無理矢理その身体を引き剥がして、そのまま場外へと蹴落としていた。

「・・・静留!」
「足、大丈夫やね?」
「・・・ああ」
「あっちのほう、任せますな」

そう言って碧のいるほうへと、走る。
そのまま軽々とトップロープへと乗ると、スワンダイブ式のトペ・コンヒーロを、碧へと放っていった。
難しい技を、何でもないように軽々とやってのける。
その綺麗な曲線を目に収めてから、痛みをこらえて立ち上がると、遥のほうへと向かっていった。

「邪魔よっ!」

遥の暴れっぷりについていけない舞衣が、雪之が、次々と客席へと放り投げられている。
奈緒は、あかねに竹刀で小突き回されていた。

「珠洲城っ!」

名を叫んで、注意をこちらに向けさせる。
すぐに気付いた遥が、なつきに向かって突進してきた。
ラリアットを、避ける。
しかし、そのまま通り過ぎていくかと思われた遥は、二歩で止まって急に方向転換すると、振り向きざまに、腕を即頭部へと叩き込んできた。
避けられなくて、まともにダメージを食らう。
崩れ落ちそうになるところをさらに腕を掴まれ、勢いよく放り投げられた。
それは、客席のほうではなく、コーナーの鉄柱のほうで。
足の踏ん張りがきかずにスピードを殺すことが出来なかったなつきは、そのまま前頭部から鉄柱へとぶつかっていった。

「うわっ!」

あまりの硬さと痛さに、意識を手放しかけた。
しかし、何かが噴き出してくるような感覚に襲われ、慌てて目を開ける。


なつきの視界は、一面綺麗な赤に覆われていた。



 
 

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Date:2008/05/27
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Comment

武藤か!<ドラゴンスクリュー

なつきもさ、足四の字かけられたらリバースでやり返せばいいのにね。
ひっくり返せば碧の膝を痛めつけられたのに。

と言ってみる(笑)

血、出ましたか。
あるお方がおっしゃってました。
汗は染みるが血は視界が赤くなるだけだ、と。
流血戦、大好き(笑)
なつきの血を見てキレる静留に期待します。
2008/05/27 【chopper】 URL #lDzLMsnE [編集]

来たな、chopperさん(笑)!

やっぱり、ドラゴンスクリューはやりたかったんです。
で、遥じゃなくて、たぶん碧だな、と。
そこはやり返す前にロープへ行くのが、なつきです(笑)

血、出ました。出してみました。
迷ったんだけど、展開的に可能だったもので。

さて、これからどうなるんでしょうかね??
2008/05/27 【管理人M】 URL #D4oB5MzI [編集]

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