SS倉庫(R18)

舞−HiME(静留×なつき)SS置場

慟哭 1

このSSは「FWPプロジェクト」に連なる流れの作品です。
まずは「必読事項」からお読みください。
そのあとに、ひたすら長いだけのお話が数多くありまして、その続きとなっております。
全部目を通してくださって、さらにまだ読みたいと思う方だけ下へスクロール↓











なつきが、消えた。
あの試合の翌日に組まれていた、FWPの興業で。
時間になっても集合せず、電話をかけても捕まらず、結局試合会場へとやってくることもなかった。

入場の挨拶で、静留が観客へと頭を下げた。
前の日の結果を知っているコアなファンたちは、薄々その欠場理由に気付いていただろうが、楽しみにこの日足を運んでくれた普通の観客にとっては寝耳に水の出来事で、なつきの欠場した分は他の選手が頑張って穴を埋めますからと、静留は再度深々と頭を下げたのだった。

ガルデローベとの試合後。
舞衣は、呆然としたままの静留を気にかけながらも、なつきを病院へと連れて行った。
出血した傷口はそう深くもなく、五針縫っただけで、後は包帯を巻かれてそのまま家へと帰された。
放心状態のなつきの手を引っ張るようにして、部屋へと送り届ける。
何も口を開かないのが心配で、泊まろうか?と声をかけたが、はっきりと拒絶された。
そして、今日だ。
何度舞衣が電話しても留守電にしか繋がらず、出発前に部屋へと急いで立ち寄ったものの、中に人の気配は感じられない。
慌てて、静留のもとへと走った。
昨日の試合後はさすがにショックが大きかったようで、ほとんど茫然自失状態だったが、会場で会ったときは、若干顔色が悪かったものの普段どおりの姿で、スタッフ達といろいろ打ち合わせなどをしていた。

「・・・静留さん!」

その腕を引っ張るようにして、物陰へと連れて行く。

「・・・なつきなら、大丈夫やと思いますえ」
「でも!全然連絡取れないし、ショックだって大きいだろうし・・・」
「そないに弱い子や、あらへんよ。そのうち、帰ってきます」
「・・・どうしてそう言い切れるんですか!」
「・・・うちに黙って消えるような子ではあらへんから。そやから、気持ちの整理をつけるためにも、時間は必要やと思いますえ」
「・・・・・・」

どうして静留は、こうもはっきりと言えるのだろう。
舞衣は少し驚いて、その青白い顔を見つめた。
自棄になってどこかへ失踪したのではないかという心配と、連絡が一切取れない不安から、自分は今にも押しつぶされそうになっているというのに。
そして、静留のほうが実はその何倍も心配であるに違いないと決め付けている部分もあって。
だから、突き放すようなその言い方に、なつきのことが心配ではないのかと詰りたくなって、それでも、我慢してその言葉を飲み込んだ。

心配に、決まっているじゃないか。
静留がなつきのことを、気にしていないわけがないのだ。

自分は一緒に入団して、ずっと友達として傍にいたけれど。
静留も違う立場で、同じようになつきを見守ってきていて。

しかし、責任のある立場だから、そんな想いを全て抱えて、それでいて、周りに気付かせることもなく、こうして見に来てくれる観客のためにリングにあがるのだ。

「・・・なつきから、連絡はありました?」
「・・・心配するな、て。一言だけやけど」
「そうですか」

なつきが一番大事に想っている静留にだけは、消える前にきちんと連絡を取っていたことがわかり、少しだけ安心する。
それなら、自分も信じて、なつきを待とう。
きっと、気持ちに整理をつけて、帰ってくるだろうから。

「タッグリーグ、棄権することになるかもしれへんけど。堪忍な」
「静留さんが謝ることじゃないですよ。なつきが戻ってきたら、私がきちんと文句を言うので」
「そやけど・・・」
「大丈夫です。別に優勝争いしているわけじゃなかったし、気にしてませんから」
「おおきに、舞衣さん」

そう言って穏やかな笑みを浮かべたまま背を向け立ち去った静留を見送ってから、舞衣は、ため息をつく。

全く。
皆をこんなにも心配させて。

でも、ガルデローベに行くと決まったからって、もう二度と会えないわけじゃない。
同じ関東を拠点としている団体だし。
活躍すれば、新聞や雑誌などで、その姿を見ることが出来る。

それに。
私たちは同期という絆で、固く結ばれている。
他団体へ少しくらいの間移籍したからといって、それは簡単に切れるものじゃなくて。
いつまでも、仲間だ。
そして、いつまでも、ライバルだ。

ずっと片手に握り締めていた携帯電話を、ジャージのポケットにしまうと、軽く伸びをした。

(なつきがいない間、自分が頑張って観客を沸かせないとね・・・)

後輩に任せっぱなしの雑用を手伝うべく、舞衣は駆け足で、会場の中へと戻ることにした。




 
 

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Date:2008/06/25
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